交渉についてこの点を知っていればよかった…
作成者 Marc Saris
インサイトに戻る交渉についてこの点を知っていればよかった…
2月 2020 作成者 Marc Saris
インサイトに戻るコンサルタントの Marc Saris は、ザ・ギャップ・パートナーシップに入社する前の交渉経験を振り返り、当社がコンサルティングプロジェクトに適用する様々な方法論を学んでいます。彼はその時の経験を振り返り、今の知識を持っていたら違ったやり方をしていただろうと語ります。
数年前、大手石油・ガス会社に勤務していた時、私は中東の国の油井開発契約の入札・交渉を任されました。私が勤務していた会社は、国の政府に代わって国内最大級の油田の開発を担当していました。これにより、サプライヤーとの交渉は更に複雑になりました。というのも、全ての戦略、交渉、譲歩は、クライアントである政府の事前承認が必要だったからです。
ザ・ギャップ・パートナーシップに入社して、当社がコンサルティングプロジェクトに適用する様々な方法論に触れた後、当時の経験を振り返って、私がここで学んだことを知っていればどうしただろうかと考えることができました。目的を明確にして整合性を取り、適切なステークホルダー管理を行うなど、当社のコンサルティングプロジェクトの重要な要素が交渉の結果を左右します。
目的の整合性
長く複雑な入札プロセスを経て、技術的に納得できる最低価格の入札者と交渉に入りました。取引先との交渉に入る前に、交渉戦略、要因、可能な譲歩などの全てに政府の承認を得なければなりませんでした。我々が直面した重要な課題の1つは、政府が我々とは異なる目的を持っており、主に契約に基づいて開発される油井の数に焦点を合わせていることでした。 政府はできるだけ多くの油井を開発したいと考えていましたが、我々は投資の規模を制限したいと考えていました。これ は、サプライヤーとの交渉に入る前に、政府と交渉しなければならない重要な要素でした。
振り返ってみると、クライアントと我々の間にはいくつかのズレがあり、目的が明確に一致せず、時間に追われて目的が不明確なままサプライヤーとの交渉に臨み、クライアントとの間に大きなズレが生じました。
ステークホルダー管理
戦略の準備や目的を明確にする一方で、政府の承認を得る必要がありました。その結果、彼らは我々とは全く異なる関心や期待感を持っていることがわかりました。政府の最高意思決定者との会議で、当社の同僚が関与した会議の議事録を見せられ、我々が事実として述べた内容と正反対の内容が記載されている事を示されたことを覚えています。これは、当社の評判を落としただけでなく、政府に対して社内の見解不一致をあらわしてしまう事態となりました。問題は、政府関係者と当社のスタッフとのやり取りが、様々なレベルで日常的に行われていることでした。その会議の結果、政府に対して大きな譲歩を受け入れなければならなくなり、大きな影響を受けることになりました。
私達は、政府のステークホルダーが全ての異なる接点から全ての情報を収集する能力や、その情報を最上級幹部に伝える事が出来るという可能性をあまりにも気にし過ぎていなかったのです。もっと時間をかけて、政府系クライアントとの日々のやりとりをマッピングして社内で調整していれば、このような事態や不必要な譲歩を避けることができたでしょう。
このことは、目標に向けた社内の適切な調整と適切なステークホルダー管理計画が重要であることを示しています。これは、戦略的交渉計画を立てる上で重要な要素であり、当社のコンサルティングプロジェクトでもかなりの時間を割いている分野です。このようなプロジェクトでは、相手とコミュニケーションを取る全ての個人、その影響力、相手との関係を割り出します。その後、成功のために必要なコミュニケーションのレベルと内容を積極的に計画します。これを明確にした上で、我々が直面した問題を回避するために、社内で説明と調整を行います。
結果
サプライヤーとの交渉は、政府系クライアントとの間にまだズレがある状態で開始されました。この結果、クライアントが自分の目的に合わない取引には同意しなかったため、1年以上にわたる長期の交渉となりました。最終的には、14ヶ月かけて交渉した結果、この契約が成立しました。我々は、力を注いでいた範囲において大幅に譲歩しなければなりませんでした。
このトピックについてご興味のある方は、当社のレポート「調達: 交渉ギャップはあるのか?」をダウンロードしてください。